『Emily in Paris』には、自分の意見をハッキリ伝えつつも、相手を不快にさせない「大人の配慮」が詰まったフレーズがたくさん登場します。
今回取り上げるのは、第1話の冒頭、エミリーがまだシカゴで働いていた時のシーンで使われたこの一言。
“I don’t want to step on your toes.”
直訳すると「あなたのつま先を踏みたくない」となりますが、実際の意味は全く違います。
この一言には、
- 「あなたの役割を奪うつもりはない」
- 「出しゃばりたくない」
- 「あなたのテリトリーを尊重したい」
という、相手のテリトリーへのリスペクトが凝縮されています。今回は、この表現の核心的な意味から、ビジネスで役立つ「クッション言葉」としての使い方まで、徹底解説していきます。
Emily in Paris のシチュエーション
物語の第1話、アメリカのオフィスで上司のマデリンが、エミリーに仕事を任せようとするシーン。
Madeline: “I want you to pitch it.” (あなたが(この案を)ピッチしてきて。)
それに対して、エミリーが返したのがこのフレーズです。
Emily: “I don’t want to step on your toes.” (あなたの仕事を横取りするつもりはないわ(私が出しゃばっていいの?)。)
純粋に上司の仕事の一部を任されそうになった時に、「それは本来あなたの役目ですよね。私が前に出すぎて、あなたの立場を邪魔してしまいませんか?」と上司の顔を立て、境界線を意識した発言かなと思います。
チャンスを喜ぶ前に、まず相手への敬意を示す。エミリーが仕事で信頼される理由が、この一言によく表れています。
I don’t want to step on your toes. の意味
✔️ 基本の意味:相手の領域を侵さない
step on someone’s toes = 相手の領域に踏み込む / 出しゃばる / 役割を侵す
イメージしてみてください。
二人でダンスを踊っている時に、相手のつま先(toes)を不意に踏んでしまったら、相手は不快に思い、ダンスのリズムが崩れてしまいますよね。
そこから転じて、物理的な足ではなく、「仕事の担当範囲や権限など、相手が大切に守っている境界線を、無遠慮に越えてしまうこと」を指すようになりました。
✔️ 日本語の「一歩引いた配慮」に近い感覚
日本語で言うところの、
- 「差し出口を叩くようで恐縮ですが」
- 「私がしゃしゃり出る幕ではないかもしれませんが」
- 「立場をわきまえない発言でしたらごめんなさい」
といった、相手を立てる前置き(クッション言葉)に非常に近いニュアンスです。
似た表現との違い(使い分けのコツ)
「邪魔したくない」「迷惑をかけたくない」と言いたい時に、他の表現と迷うことがありますよね。ここでは代表的な2つとの違いを整理します。
1. “I don’t want to bother you.” との違い
- bother you = 相手の「時間」や「手間」を奪いたくない時(忙しそうな時に声をかけるなど)。
- step on your toes = 相手の「立場」「権限」「役割」を奪いたくない時(仕事の内容に口を出す時など)。
2. “Steal someone’s thunder” との違い
- steal someone’s thunder = 相手が発表しようとしていたことや、注目を集めるはずだった「手柄」を先に奪ってしまうこと。
- step on toes = 手柄に限らず、やり方やプロセスなど、相手の「やり方」に口を挟むこと。
応用編:もし「踏んでしまった」時はどうする?
もし、自分の発言や行動が「出しゃばりすぎたかな?」と後から気づいた場合、どう謝ればいいでしょうか?このフレーズを過去形や現在進行形にするだけで、誠実さが伝わる丁寧な謝罪になります。
- “I’m sorry, I didn’t mean to step on your toes.”
(ごめんなさい、あなたの領域を侵す(出しゃばる)つもりはなかったんです。)
👉 ポイント: “didn’t mean to”(〜するつもりはなかった) と組み合わせることで、「あくまでリスペクトはあったけれど、結果的に配慮が足りなかった」という意思をスマートに伝えることができます。 - “I hope I wasn’t stepping on your toes during the meeting.”
(会議中、出過ぎた真似をしていなかったか心配です。)
👉 ポイント: “I hope I wasn’t 〜ing” と進行形にすることで、「あの時の私の振る舞い、大丈夫だったかな?」という控えめな確認のニュアンスになります。 - “I apologize if I stepped on your toes earlier.”
(さっきは、もしお立場を悪くするようなことをしていたら申し訳ありません。)
👉 ポイント: “if” を使うことで、「もし不快にさせていたら」という仮定の謝罪になり、ビジネスシーンでも非常に使いやすい形です。
仕事・日常で使える例文
応用編で「謝罪」について触れたので、ここでは「これからアクションを起こす時」や「自分のスタンスを伝える時」にフォーカスして整理します。
1. 相手の役割や仕事を引き継ぐ時(Emilyスタイル)
上司や同僚から「これ、君がやって」と頼まれた時、Emilyのように一言添えるだけで、謙虚さとプロ意識が伝わります。
- “I don’t want to step on your toes.” ((本来はあなたの仕事なのに)私が出しゃばる形になっていいの?)
2. サポートを申し出る時
相手が忙しそうな時、「手伝いたいけれど、あなたの領域(やり方)を荒らすつもりはない」という意思表示に使います。
- “I’m happy to help, as long as I’m not stepping on your toes.” (あなたの邪魔にならないのであれば、喜んで手伝うよ。)
3. 「新入り」や「部外者」として立ち振る舞う時
チームに加わったばかりの時、周りのやり方を尊重していることを示すために使います。
- “Since I’m new here, I’m trying not to step on anyone’s toes.” (新入りなので、皆さんのやり方を邪魔しないように気をつけています。)
まとめ
- step on your toes は「出しゃばる」「役割を侵す」という意味。
- I don’t want to step on your toes. は、上司や同僚へのリスペクトを示しつつ、自分の価値を発揮するための魔法のフレーズ。
- 第1話でエミリーがマデリンに見せたように、「相手の立場を理解しています」というサインが、プロフェッショナルな信頼関係を築く第一歩。
「自分の意見を言いたいけれど、出しゃばりだと思われたくない……」 そんな時は、ぜひこの「つま先」のフレーズを思い出してください。配慮ができるプロフェッショナルとして、あなたの言葉がより好意的に受け入れられるようになるはずです。
▼あわせて読みたい!『Emily in Paris』英語解説シリーズ
今回の「配慮」のフレーズとセットで覚えておきたいのが、エミリーが仕事でチャンスを掴むためのもう一つの合言葉「Fake it till you make it」です。
ぜひこちらの記事でもチェックしてみてください!
👉 fake it till you make itの意味と使い方|Emily in Paris で学ぶポジティブ英語フレーズ
[前回の記事] take pride in の意味と使い方|シカゴピザの話

